広瀬川歩記121
孤独
広瀬川沿いを歩いていると、よく鳶に餌をやっている老人を見かける。
最初は迷惑な老人だとしか思わなかったが、使い古した通勤靴とオーバーコートを身につけて吹きさらしのベンチに座っているのを見かけるうちに、次第に正視する気にならなくなってきた。
昼間、捨て猫をいとおしそうになでている老婆や、大学生と思われる若い男性を見かける。餌ももちろん用意してある。だがそれ以上に心が通い合っているかのように、ネコもまとわりつく。小1時間彼らは交流している。
ふと、マルタ島の老人を思いだした。
その犬は老人の足を利用して器用に腰を落としている。何かを見つけると、腰を上げ去って行くがものの5分もしないうちに戻ってくる。足に体重がかかるはずだ。だが老人は少しも動かず、目をつぶり続けている。
通りすがりの人が奇異に感じて眺めまわしても、決して、犬も老人も気付こうとはしない。