広瀬川歩記55

昨日の続きみたいな

いよいよ9月。

暑いさなかの第2波が山を越えたそうだが、秋になれば第3波が来るのではないかと、何だか心配になる。

とはいえ、ずっと家にこもってばかりもいられないので、外に出る。川縁を歩く。そして化石探しの人を見つける。

アア、考古学とは違うのだなあ。勝手に採集しても問題ないのだ。なんて目で見ながら、考古学に想いが移る。

考古学を私はほとんど知らないが、それでも生きてきた分だけ色々な考古学者・研究者を見てきたように思う。

その中で最も記憶に残っているのは、東京の私立K大学教授であったE氏。もう5年前に亡くなっているが、じつに印象的なテレビを見たことが忘れられない。

1970年年代前半のことだったと思うが、NHKの報道朝番組で縄文の遺跡解説に引っ張り出されていた同氏。女性アナが「黒曜石の鏃はどこから手に入れたものなのでしょうか。」と質問すると、突然ジェスチャーを交え、「縄文人は忍者のように横歩きをしたんです。走るのと同じくらいのスピードで長野県の和田峠まで行って、その日のうちに戻ってきたのです。

その日、私は大学に駆けつけ考古学書を片っ端から調べたが、横歩きの足跡がどこかの遺跡で出ている証拠を一切発見できなかったことは言うまでもない。

私の考古学上の恩師によれば「E君は朝が苦手で、不機嫌だと何を言い出すか分からない。」とのことだった。