広瀬川歩記130
食べること
広瀬川の心地よい水音は何日も続くものではない。相当降っても増水からほんの2,3日で流路は元の細いものになり、名残水とでも呼びたくなるような水たまりが河川域に点在することになる。
そこに1羽のダイサギを見つけた。
岩陰で素早く首を伸ばすダイサギ。
顔を上げてみれば、口には魚が。
咥え直して天を向き、喉に通していく。満足げに次の”名残水”に向かう。
小さな水たまりで逃げ惑う小魚。それを許さない鳥。命を確実に奪うことで命を繋ぐ非情。
緊張感が私を包む。
不意に「食レポ」「グルメ」「こだわりの逸品」「カリスマシェフ」そしてついには「食糧自給率」まで浮かんでくる。そして「本当にいいのか」という声まで。
広瀬川歩記129
川の音が聞こえる
待っていた梅がようやく命を伝え始めた。向こうの小川はさらさらと囁くようだ。
今日は寒い。
だが2,3日前の雨で川は潤い、どこを歩いても川の音楽が聞こえる。
音は違う。岩にぶつかる音。段差を滑り落ちる音。せせらぐ音。
そうした一つ一つが川の表情で、ぼくは素人でもやっぱり写真に収めたい。川音って本当に心地よいから。
広瀬川歩記128
こんな日は
先日、うららかな日差しに春を感じますと書いたばかりなのに、そして何よりもチョウを見たことを写真とともに紹介したのに、今日、雪が吹雪くように荒れ、風が乱舞してチョウはどうなったことかと思いをはせる日になった。
そんな日は、煩わしいことが胸に突き刺さる。最近特に政治を中心に日本人の劣化を憂えたくなることが多いのに、今日、ニュースに出てきた河野大臣の言葉に、それはそれは愕然としてしまった。
「国民に理解してもらうことが大切」というこの大臣、今日のテレビでは「ワクチンのベネフィットとリスク」について云々と言っていた。
その言葉は自然に口をついたのだろうか、教養を見せびらかしたかったのだろうか、国際人であると主張したかったのだろうか。
だが、「リスク」はともかく「ベネフィット」を理解できる国民はどれほどいるのだろうか。
広瀬川歩記127
どっちを書こうか
昨日、大きな地震があった。夜11時7分。
もう寝ていたが、揺れを感じて目が覚めたらしい。私が目を覚ますぐらいだから、大きい。そして長い。地震の嫌いなところは、だんだん揺れがひどくなっていくところだが、これは不躾なほど盛り上がっていく。恐い。
テレビをつけに入ったリビングでは、ガラスケース内のグラスがいくつも割れている。金魚のケースからは相当量の水が飛び出している。
10年前の震災の余震だって。これでも余震かよ!妙に腹が立つ。
今日、広瀬川の崖はどうかな、と見に行ってみた。
上の方が...?...
ほぼ1年前の写真で照合。
どう?角度は違うけれど、崩れが進んだ様子は分かるよね。
と、まあ、昨日の大規模地震を題材にしようと考えていたんだけれど、この写真をトリに行った時、思いがけないものを見つけた。
それがこれ。
キタテハだと思うのだけれど、蝶が舞っているのを見てしまいました。
それほど昨日、今日と暖かい。でも明日からまた冬に舞い戻るとか。
フライイング気味のチョウよ。花も見当たらない中、頑張って生きるのだぞ。
広瀬川歩記126
春よ、来い
昔、雪の第三京浜を走っている時に、後ろから猛スピードで近づいてきたトラックを避けようとブレーキを踏んだ途端、見事にスリップして中央分離帯にぶつかったことがある。
それ以来、雪の運転はトラウマ。
今シーズンは雪が多い。にもかかわらず暖かい日も多い。それが雪の翌日であったりすると、もう私は嘆息するしかない。
今日は、昨日とあまり変わらず8℃前後。しかし昨日と違って風がない。その分、暖かい。土・日はもっと暖かい予想だが、そんなに気温が高いと、クマが出てくる。しかも子連れ母熊だったらどうしよう。
その前に山に行かなきゃあ。だが山道に雪は残っているはず。登る自信はない。
かくて今日も無意味に時は過ぎていく。悶々とする老人を閉じ込めて。