広瀬川歩記112
頑張る人
今シーズンは雪が早い。それに相当量。
早くもシーズン初めからジャンジャン降って、それなり量も多いが、案外融けやすい。
降る時は降る、なんて妙に聞こえはいいが、こたつに入っていればこその話で、外へ出てみると、こんな日でも犬の散歩は欠かせないのだと凍える声で呟く人がいる。
それなのに、勇者という者はいるものだ。
遙かな向こうからヒタヒタとやってくるのは!
近づけば若者。荒い息づかいさえ聞こえる。顔はゆがんでいる。彼はもう何往復したことだろう。大雪の中でも頑張っているのだ。中学生ぐらいか?きっと有望選手に違いない。
ン?ランニング・フォームはちっとも良くないな。アゴが上がっているなあ。これで有望選手?ありえないでしょ。今時の生徒さん、もっと研究してますよ。
彼の顔、姿、一度でも見たことあるかな、と記憶をたどるが、少なくとも学校のユニフォームも着ないで単独で走る子は見たことがない。
イヤッ、一人だけいた!、、、そうだ!去年の大雨の日、むやみに走る子を見たことがある。あの子だ。元日、ばたばたと走り抜けていった子がいた。あの子だ!
かれは悲壮感を漂わせ走りすぎてゆく。それを味わいたい為だけに、彼は”特別な日”にのみ走るのだ。
僕にもそんなときがあった。