広瀬川歩記47
なんか、可哀想な気もする
幼い子はなぜ、あんなにも虫取りが好きなのだろう。触ったら火傷をするのではないかと思うほどに顔中を真っ赤にしながら網を振るっている。
冬でも小さな水たまりを見れば、もう飽きずに眺めている。虫がいるようには思えない。でも何かが見えている。大人には分からない。
子供は水が好きだ。とくに魚を追いかけるのは楽しい。
親の方が夢中になっているのは微笑ましいが、静かに見守っているのも好ましい。
もう、あたりは暗い。
桑の木がある。そこには色々な鳥が来る。虫も来る。
歩いていたら、ミンミンの声が聞こえてきた。
ホォ~。どこにいるのだろうか。
アブラゼミはすぐに見つかった。が、肝心のミンミンゼミは見つからない。
向こうから来た高校生男女二人が、セミを探しているらしいと踏んで自分たちも探し始めた。女の子がすぐにアブラを見つけ、男の子が私の方に得意げな眼差しを投げかけてきた。
ああ、見つけたね。でもそれはメスのアブラゼミだね。ミンミンはどこだろう。
エッ、違うんですか。二人は怪訝な顔をする。
大人になっても虫取りを止められない人が昆虫学者になり、そのほかの人はたいて小学校の高学年の頃には、幼心を忘れていく。